The Harmony of Form and Function

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Spazio 31 / スパッツィオ 31
2023年 4月18-22日

坂 茂による設計コンセプト

フランク・ロイド・ライトのタリアセンランプの魅力を引き出すには、美術館のようなホワイトボックスではなく、素材の質感を生かした翳のある空間が良いと考えた。ライトがタリアセンをデザインした際にも、そのような空間で使用することを想定していたはずである。
ここで提案した紙管を使用したシンプルなトンネルの展示空間は、壁から天井まで同一の材料で覆うことでタリアセンランプのデザインを邪魔することなくその柔らかな光の質を来場者に体験してもらうことを目指している。紙管のトンネルはライトの代表作の一つであるジョンソン・ワックス社屋のガラスチューブで構成された廊下を連想させるものでもある。また同様のトンネル状の空間はライトの晩年の作品で、グッゲンハイム美術館のプロトタイプとしても知られる旧モリス商会のエントランス部分にも見られる。こちらは細長いレンガを使用しているため、色味も含めてますます紙管のトンネルとの共通性が感じられる。 紙管というリサイクルが可能な材料を使うことで短期間の展示会で建材を無駄に消費せずとも、フランク・ロイド・ライトの世界観を効果的に表現できたと思う。