スイスを代表する時計ブランドともいえるスウォッチとオメガは、スイス時計産業の中心地であるビール・ビエンヌに本社キャンパスを構えている。2つのブランドのキャラクターを端的に示すよう、それぞれの建物には全く異なるデザインコンセプトが与えられた。スウォッチ本社には自由さと楽しさ、オメガには精度、堅実さおよび高い品質、そして2つのブランドの橋渡しをする中心的施設であるCité du Tempsは双方の特徴を兼ね備えている。
坂の狙いは、ブランドごとの特色を出しつつも、地域のコンテクストに根ざした共通のテーマを与えることであった。その中で木造を選択することは次に上げる2つの点において完全に合理的な判断であった。まず木造はその施工精度、極めて短く静かな建方工程、そして唯一の再生可能な構造材という点で究極の建材といえる。そしてコンテクストの観点からはビール・ビエンヌの町はスイスを代表する木造の専門大学があることで知られる最先端木造技術の中心地であり、実際に坂茂建築設計の代表作の一つであるポンピドゥー・センター・メスの木造大屋根のプロトタイプはここで作られたというつながりもあった。このプロジェクトで使用された木材の総量、4,600㎥はスイス全土の杜の樹木の成長率を考慮すると、たった10時間で再生される計算になる。
スウォッチ本社
ー 工事中の写真
ー 完成写真
シテ・デュ・タン展示場・ホール
オメガ生産本部